金融・為替市場や資本市場などの信用市場、通貨制度、支払・決済システムが、全体として整然かつ円滑に機能している状態をいう。





1.金融システムの安定性維持

 金融システムの安定性を維持することは、国民経済が健全な発展を遂げるうえで欠かすことのできない前提条件となっている。金融システムが全体として安定して効率的に機能することを確実にするためには、(1)市場における公正な競争とチェック機能、(2)政府による監督・規制、(3)あらかじめシステミック・リスクの発生を防ぐ仕組みを金融システムのなかに組み込んでおくこと、等が求められる。このための施策としては、以下のものがあげられる。

(1) 事前的措置
 経営の健全性を確保して金融機関の破綻を未然に防止しようとする施策で、(1)競争制限的規制(業務分野規制、金利規制)、(2)バランスシート規制(自己資本比率規制、大口融資規制等)、(3)金融機関検査・考査(金融庁検査日銀考査)、(4)市場によるチェック及び業界団体の自主規制、がある。なお、金融の自由化や金融システム改革(「金融システム」参照)により、競争制限的規制は緩和され、バランスシート規制が中心となっている。

(2) 事後的措置
 システミック・リスクの発生を防止しようとする措置(セーフティネット)で、(1)日銀貸出や日銀特融(経営破綻した金融機関に対して預金払戻資金を供給するために、日銀法第37、38条に基づき無担保で行う特別融資)、(2)預金保険制度(金融機関が預金の支払不能になった場合に、保険金〈保険料は金融機関が預金保険機構に支払う〉の支払いにより預金の払い戻しに充てる制度)、(3)政府による救済措置や民間銀行間の相互援助制度、がある。

2.バブル崩壊と信用秩序維持政策

(1) 金融機関の破綻
 企業の資金調達手段が直接金融(「金融市場」参照)にシフトし、企業の銀行離れが進んだなか、86年から91年頃までのバブル時代に、銀行は融資先を求めて甘い条件下での不動産関連融資を増加させた。バブル崩壊後、それらの融資が土地価格の下落により回収困難となり、不良債権化した()。不良債権は金融機関の経営を悪化させ、96年の「住宅専門金融会社(住専)」の破綻、97年から98年にかけての大手を含めた金融機関の相次ぐ破綻を引き起こし、金融システム不安が深刻化した。

(2) 金融システムの安定化へ向けた取組み
 金融システムの安定と金融機関の再生のため、政府は、次のような措置を行った。まず、社会的混乱を回避する目的で96年6月にペイオフ実施を凍結した。また、破綻を未然に防ぐために、98年4月より早期是正措置を導入し、自己資本比率を指標として金融監督庁(2000年7月から金融庁)が経営指導を行うこととした。
 98年3月には都市銀行等21行に対して、99年3月には15行に対して総額9兆3,000億円の公的資金による資本注入が行われ、貸し渋りの解消や、自己資本の充実が図られた。不良債権処理については、整理回収機構が設立され、破綻金融機関のみならず、健全な金融機関からの不良債権買い取りを行った。さらに、破綻した金融機関を処理するために、金融再生委員会が新設され、破綻認定を行い、(1)金融管財人による清算、(2)国が株式を取得する「特別公的管理」(一時国有化)、(3)公的ブリッジバンク(破綻銀行の営業譲渡先が見つかるまでのつなぎ銀行)、のいずれかの方式により破綻処理を行うこととした。
 このような政策と、超低金利政策(「金融政策」参照)、積極的な財政出動などによって、99年に入り事態はようやく小康状態を迎えた。しかし、これらの制度の運営次第では、銀行のモラルハザード(倫理観の欠如:国による救済に寄りかかって、銀行や預金者がリスク軽視の行動に出ること)を招く危険性が指摘されている。