資金の調達・運用等を目的に、金融資産・負債あるいはそれに関連した権利・義務を取引することを金融取引といい、金融取引を行う場のことを金融市場という。





種  類 内  容

インターバンク市場

コール市場

金融機関が支払準備金の過不足の調整などのために必要とする資金を貸借する市場であり、主として専門の仲介機関である短資会社を通じて取引する。

手形売買市場

より期間の長い短期資金を運用、調達する市場であり、機能的にはコール市場と同じ。

オープン市場

債券現先市場

一定期間後に一定価格で売り戻す(あるいは買い戻す)ことをあらかじめ約束した債券売買取引を行う市場。国債の売買が中心となっている。

CD(譲渡性預金)市場

第三者に譲渡可能な自由金利預金の取引を行う。CDは、金融機関が資金調達のために発行し、主に法人や官公庁の共済組合等が購入する。

CP(コマーシャルペーパー)市場

CPの取引を行う。CPは、企業の短期資金調達手段であり、一定の適格条件を満たす企業が無担保で発行できる。

FB(政府短期証券)市場

FBの取引を行う。FBは、国庫の一時的な資金不足を補うために発行する割引国債。

TB(短期国債)市場

TBの取引を行う。TBは、期間1年未満の割引国債で借換債として発行するもの。



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1.短期金融市場

(1) 短期金融市場の種類と機能
 短期金融市場は、満期までの期間が1年未満の金融資産の取引が行われる場で、インターバンク市場(参加者を金融機関に限定)とオープン市場(参加者に限定なし)からなり、その主な市場は、図表のとおりである(図1)。短期金融市場の機能としては、(1)企業、政府、個人などの各経済主体による短期資金の運用・調達、(2)銀行の資金過不足の調整、(3)中央銀行(日銀)による金融政策(「金融政策」参照)の場であること、があげられる。各経済主体の短期資金運用・調達の場としては、預貯金・貸出市場などもあるが、銀行が資金過不足の調整を行う場は短期金融市場のみである。

(2) 短期金融市場の現状と課題
 我が国では、70年代までコール市場が圧倒的なウエイトを占めていたが、80年代以降オープン市場での新設が続き、市場規模が拡大している(図2)。79年に創設されたCD(譲渡性預金)は99年末で発行残高が35.5兆円と、オープン市場の中核をなしている。また、87年にはCP市場が創設され、その後の緩和策により順調に発展している。その結果、99年末の発行残高はインターバンク市場が25兆円、オープン市場は144兆円となっている。なお、99年には、ゼロ金利政策(「金融政策」参照)の実施により、機関投資家が資金をコール市場から普通預金等にシフトさせたため、資金の流れがコール市場以外の市場・商品を経由することとなり、市場残高は減少した。
 短期金融市場の課題としては、(1)アメリカ等における市場規模と比較すると、まだ拡大の余地があり、金融商品の一層の多様化を図ること、(2)税制など制度的な面で自由化、国際化の進展と調和を図ること、(3)金融自由化の進展とともに欧米諸国と同様に市場金利が各種金利を先導するようになり、金融政策における短期金融市場の重要度が高まっていることからTB、FBを中核市場として育成すること、が挙げられる。FBについては、これまでは、事実上の日本銀行引受の状態で、日本銀行がその保有証券を市中に売却しない限り市場が形成されないような状態であったが、99年4月以降発行方式が公募式に改められたため、本格的な市場となる契機を迎えている。

2.長期金融市場(証券市場)

(1) 長期金融市場の種類と機能
 長期金融市場は、証券市場、資本市場とも呼ばれ、株式市場と債券市場からなる。長期金融市場は、(1)企業、国・地方公共団体等が、株式・債券の発行によって設備投資、財政資金、長期貸付資金等の長期的・安定的資金を調達する場であり、(2)個人や生保、銀行などの機関投資家が、すでに発行された株式、公社債を売買し、資金を運用する場でもある。

(2) 長期金融市場の現状
 東証(東京証券取引所)など全国8ヵ所の証券取引所において、一定の基準を満たした上場株式・債券が発行・売買(取引所取引)されている。上場には厳しい基準が課せられるため、上場するのは有力な大企業に限られている。証券会社の店頭で取引される株式については、その取引条件を日本証券業協会が自主的に整備した(83年)。これを店頭市場という。また、ベンチャービジネス(「ベンチャービジネス」参照)育成のため、95年から第2店頭市場と呼ばれる店頭登録特則銘柄制度が設けられたほか、新興市場として99年11月に東証が「マザーズ」を、2000年6月に大証(大阪証券取引所)が「ナスダック・ジャパン」を創設するなど、従来の制度では店頭登録・上場できなかった企業の資金調達を支援する仕組みづくりが進められている。

(3) 証券市場改革
 長期金融市場では、従来より上位総合証券会社への取引の集中、株式売買手数料の固定化等、閉鎖的な市場の構造が指摘されてきた。市場での公正な取引を確保するため、インサイダー取引規制の強化(89年)、5%ルールの導入(90年)、一般投資家の一層の保護を目指した証券取引等監視委員会の設置(92年)やディスクロージャー制度の充実(93年)、等が図られてきた。また、96年以降の金融システム改革(「金融システム」参照)により、(1)投資対象、資金調達手段の拡大(証券総合口座の導入〈97年〉、デリバティブの全面解禁〈98年〉、銀行窓口での投資信託販売〈98年〉等)、(2)取引市場の整備(取引所集中義務の撤廃〈98年〉)、(3)サービスの質の向上と競争の促進(免許制の見直し〈98年〉、専業規定の廃止〈98年〉、株式売買手数料の完全自由化〈99年〉)、が行われた。このような改革を契機として、インターネットなどで売買を発注し、取引を成立させる電子取引が発達し、また、そのような業務に特化した証券会社の新規参入が相次いだ。そして、大手証券会社との競合の結果、手数料が大幅に低下する一方、顧客へのサービスが向上し、それが、投資家層の拡大につながるという好循環が生まれている。

(4) 株式市場と企業金融
 企業の資金調達の方法には、間接金融(金融機関からの借入)と直接金融(株式発行と債券発行)がある。株式の発行方法には、(1)株主に新株の引受権を与える株主割当、(2)取引先など特定の者に新株引受権を与える第三者割当、(3)不特定多数のものを募集対象とする公募がある。公募は通常、時価発行となり、多額の資金調達のメリットがあることから、株式発行の主流であったが、90年以降の市場環境悪化を受けて休止され、ようやく96年3月に再開された。バブル崩壊後、企業の株式発行による資金調達は低迷していたが、99年は優先株と第三者割当による資金調達が急増している(図3)。これは、優先株については、主要銀行が公的資金による資本注入「金融システムの安定性」参照)に向けて優先株を発行したため、また、第三者割当については、会社再建や業務提携、銀行による資本増強などを目的として行われたためである。

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(5) 債券市場と企業金融
 我が国の企業は伝統的に間接金融により資金を調達してきた。このため、債券市場は金融債中心の小規模市場であったが、75年以降、政府歳入不足を補うための国債大量発行を契機に市場が拡大した。また、86年以降の株式市場の活況から、転換社債やワラント債といったエクイティ・ファイナンス(新株発行を伴う資金調達)が企業の有力な資金調達手段となったが、株価の低迷等により90年以降は低水準に推移し、代わって普通債の発行が増加した。98年に普通債が大幅に伸びているのは、不良債権問題や自己資本比率強化の動きを背景に金融機関の貸出姿勢が慎重になったことが原因と考えられている(図4)。

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3.デリバティブ(金融派生商品)市場

 デリバティブは、債券、通貨、株式など伝統的な金融商品から派生した商品で、主な取引にオプション先物取引スワップがある。これらは資産価格のリスクを管理する目的で開発されたものであるが、投機の手段として利用されるようになった。
 このうちオプション取引は、債券などの金融商品に関し契約時に決められた価格で一定期限までに買う(あるいは売る)権利を、オプション手数料を対価に売買するものである。例えばオプション手数料10万円を支払い、A債券を2ヶ月後に1億円で売る権利を取得した人は、2ヶ月後にA債券が9900万円になった場合、オプションを行使する(A債券を売る)と同時にA債券を購入することによって100万円の差額を得ることができる。手数料の10万円を差し引くと純益は90万円となる。また、(手数料と比較して)不利と判断すれば権利を行使する必要はない。差額決済を行うので、実際に債券を持たずに済み、オプション手数料分の手元資金さえあればよい。少額で巨額の資金を動かせることがデリバティブ興隆の一因になっている。
 デリバティブ取引は、国内だけでなく、国際間の取引にも大きな影響を与えるようになってきており、今日では想定元本(名目上の債券などの元本)は世界で50兆ドルを超えるものとみられている。