企業の営む種々の経済活動を一定の方式によって記録・計算・分類・総括する方法をいう。経済のグローバル化に伴い、日本の企業会計も連結決算中心主義への移行や時価会計の導入など会計ビッグバンを迎えている。







1.企業会計とディスクロージャー制度

 企業会計を規定する法令には、商法、証券取引法、法人税法等があり、商法や証券取引法において、企業の経営内容等の情報を開示することが義務づけられている(ディスクロージャー制度)。商法では、債権者保護を目的として、計算書類を作成し、その要旨を公告することを定めている。証券取引法では、一般投資家の保護を目的に、企業の経営内容を一定のルールのもとに開示させ、証券市場を健全に成長させていくために、財務諸表を作成し、有価証券報告書に記載して財務大臣に提出し、かつ一般開示することを定めている。
 こうしたディスクロージャーは米国で発達した制度で、我が国でも欧米にならって80年代後半から証券取引法等の改正を行い、連結決算情報やセグメント情報の開示、5%ルール、インサイダー取引規制が導入されている。

2.貸借対照表と損益計算書

(1) 貸借対照表
 貸借対照表は、ある一時点における企業の財政状態(ストック情報)を明らかにするもので、その時点で企業が保有する全ての資産と、その調達に要した負債(他人資本)と株主資本(自己資本)の状況を示している。貸借対照表の形式には、勘定式と報告式があり、勘定式の場合、左側に資産、右側に負債と株主資本を記載し、左側と右側の合計の金額が一致することから、バランスシートとも呼ばれる。また、記載の順序は、流動性の高い項目から並べる流動性配列法が原則になっている(表1)。

(2) 損益計算書
 損益計算書は、ある一定期間における企業の経営成績(フロー情報)を明らかにするもので、期間中における全ての収益とこれに対応する費用・損失が記載される。企業本来の活動による収益と費用を示す「営業損益の部」、本来の活動以外による「営業外損益の部」を合わせた「経常損益の部」、臨時的あるいは特殊な損益を示す「特別損益の部」から構成され、最後に当期未処分利益が記載され、ここで貸借対照表とつながる(表2)。

3.会計制度改革(会計ビッグバン)

 金融庁企業会計審議会において、IASC(国際会計基準委員会)が作成したIAS(国際会計基準)をベースに会計制度改革が進められ、関連法令等の整備が行われている。新会計基準は99年度決算から上場企業等を中心に順次導入されている(表3)。背景には、(1)国際市場での資金調達が増加し、企業会計のグローバル・スタンダードへの対応が求められたこと、(2)金融システム改革(「金融システム」参照)の一環として、透明で信頼できる市場を確保するため、企業会計制度を整備する必要があったこと、などがある。

(1) 連結決算中心のディスクロージャーへの転換
 企業経営の多角化が進み、また我が国証券市場への海外投資家の参入が増加する中で、企業の側で連結経営を重視する傾向が強まり、投資家からも企業グループの経営状態を的確に判断するため、連結情報に関するニーズが高まっている。
 そこで、「連結財務諸表原則」が改正され、(1)有価証券報告書等においては連結情報を中心に記載すること、(2)連結キャッシュ・フロー計算書の導入、(3)中間連結財務諸表の作成、(4)純粋持ち株会社が解禁されたことに伴う持ち株会社の情報開示、などが定められた。また、連結子会社の範囲は、従来の「持ち株基準」から、経営についての「支配の実質性」基準に変更され、拡大された。これらは、子会社に赤字を押し付けるといった親会社本位の経営をなくすだけでなく、グループ経営の効率化、不採算企業の整理などグループの再編も促すものと考えられる。

(2) 連結キャッシュ・フロー計算書の作成
 貸借対照表や損益計算書は発生主義に基づいて作成されている。これに対し、キャッシュ・フローとは、現金ベース(現金及び現金同等物)での収入と支出を示すもので、企業活動全体におけるこうした資金の流れを示す。新会計基準では、連結キャッシュ・フロー計算書の作成が義務づけられ、一定期間における企業のキャッシュ・フローの状況を、営業活動、投資活動、財務活動の3区分で表示することが定められた。
 背景としては、バブル崩壊とその後の景気低迷のなかで、企業の支払能力についての判断や、経営の効率化が厳しく求められ、経営指標としてのキャッシュ・フローが注目されるようになったこと、金融システム不安などで銀行の貸し渋りがおき、企業が自ら稼ぎ出す現金であるキャッシュ・フローが重視されるようになったこと、などがある。

(3) 時価主義の適用拡大
(1)金融商品に係る会計基準表4
 商法では資産を取得原価で評価するため、含み益や含み損が発生するが、これらは決算書には表れない。また、デリバティブ取引は決済されるまでその損益が決算書に表れない。このため、決算書が会社の実態を正しく反映していないことになる。
 そこで金融商品について、時価評価が導入されることになった。金融商品によって評価方法が異なり、(1)売買目的の有価証券は時価評価し、当期の損益に計上、(2)満期保有目的の債権は償却原価または取得原価で評価、(3)子会社及び関連会社の株式は取得原価で評価する。また、(4)持合い株式を含むその他の株式は時価評価し、評価差額を資本の部に剰余金として計上する。
(2)退職給付に係る会計基準表4
 確定給付型の企業年金制度では、低金利や有価証券の値下がりで年金資産に含み損(隠れ債務)が発生しているにもかかわらず、貸借対照表上に計上されず、企業の抱えるリスクが明らかにされていない。また、退職一時金は引当金を貸借対照表上に計上し、引当金繰入額を損益計算書に計上するが、企業年金については掛金を費用として損益計算書に計上するなど、異なる会計処理が行われていた。
 そこで、企業年金を含む退職給付全般にかかる包括的な会計処理が行われることになった。退職一時金と企業年金を合わせた将来の退職給付のうち当期に負担すべき額を損益計算書に費用として計上し、年金資産は時価評価されて、当期における退職給付債務との差額が貸借対照表に退職給付引当金として計上される(図1)。
 不足額が大きいと利益を圧迫するため、年金債務を前倒しして処理する動きが広がっており、また確定拠出型年金制度「年金」参照)へ移行する動きもある。



(4) 税効果会計表4
 企業会計と課税所得計算は、その目的が異なることから、収益または費用(益金と損金)の認識時点や額に相違が生じるため、法人税を控除する前の当期純利益と法人税額等が期間的に対応せず、将来の法人税等の支払額に対する影響も貸借対照表に表示されない。また、税引後当期純利益は、税引前当期純利益から確定申告による要納付額を控除して算出されるが、これでは税務上の課税所得計算により企業会計上の税引後当期純利益が影響を受け、企業の業績が適切に反映されない。
 そこで、実際の税支払額にかかわらず、法人税額を期間配分して会計上に記載することにより、当期純利益と法人税額を合理的に対応させることになった。この手続きを税効果会計という(表5)。


(5) 研究開発費表4
 研究開発費は、企業の経営方針や収益予測に関する重要な投資情報となる。従来の会計基準ではいったん繰延資産に計上され、減価償却計算に基づいて費用処理されていたが、範囲や概念がはっきりせず、資産計上するか否かも経営者の裁量にまかせられていたため、企業間比較ができなかった。また、ソフトウェアの制作費に係る会計基準の整備も求められていた。こうしたことから、研究開発費の概念・範囲が定められ、発生時に一括費用処理することとされた。