世界規模で進行するIT革命に対し、我が国の取り組みの遅れが指摘されている。2000年11月に決定された「IT基本戦略」では、IT革命を国家戦略と位置づけ、法制度や情報通信インフラなどの国家基盤を早急に確立することを提唱している。





1.情報通信政策の推進

 政府は、高度情報通信社会の構築に総合的に取り組むため、94年6月に高度情報通信社会推進本部を設置し、97年2月に「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」を決定した(98年11月改訂)。また、同方針の3つの行動原則(民間主導、政府による環境整備、国際的な合意の形成)に基づき、99年4月にアクションプランが作成され、電子認証に関する制度整備(電子署名認証法2001年4月施行)、個人情報保護の法制化、教育の情報化、光ファイバー網の整備促進 (2005年に完了予定)、次世代携帯電話(IMT-2000)の導入(「情報通信産業」参照)に向けた関係規定の整備などの政策を進めた。
 なお、教育の情報化については、後述する電子政府の実現とともに、98年12月に発足したバーチャルエージェンシー(省庁の枠を超えて推進すべきプロジェクトを首相直轄のもとに実施するタスクフォース)や、99年12月に決定されたミレニアム・プロジェクトにおける主要課題に据えられている。

2.IT革命への対応

 このような取り組みにも関わらず、IT革命が世界規模で進行し、アメリカはもとより欧州やアジアの国々がIT基盤の構築を国家戦略として集中的に進めるなか、インターネットの普及率が主要国中最低レベルにあるなど(「高度情報化社会」参照)、我が国の現状は大きく遅れている。このため、2000年7月に、高度情報通信社会推進本部を廃止し、新たに情報通信技術(IT)戦略本部及びIT戦略会議が設置され、同年11月、5年以内に世界最先端のIT国家となることを目標に掲げた「IT基本戦略」(2001年1月にe-Japan戦略に改称)が決定された。また、この戦略を実行に移すための「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)」が成立し、両組織は高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(新IT戦略本部)へ移行した。
 IT基本戦略(e−Japan戦略)では、取り組みの遅れの原因として、通信事業の事実上の独占による高い通信料金と利用規制などを指摘したうえで、次の4つの重点政策分野に集中的に取り組むこととしている ()。

(1) 超高速ネットワークインフラ整備及び競争政策
(1)5年以内に3000万世帯がDSL(デジタル加入者網:「情報通信産業」参照)などを活用した高速インターネット網に、1000万世帯が光ファイバーを使った超高速インターネットアクセス網に常時接続可能な環境を整備する。
(2)最先端の高速無線インターネット環境を実現し、高度道路交通システム(ITS)地理情報システム(GIS)などと連携した高度な移動体通信サービスを普及・促進する。また、これらの実現のために、電気通信分野の規制緩和と公正な競争を促進し、行政によるチェックを事前規制から事後チェック型に改める。

(2) 電子商取引ルールと新たな環境整備
 事業者間B to B)取引及び事業者・消費者間(B to C)取引の市場規模を2003年に98年のそれぞれ10倍、50倍を大幅に上回る水準に引き上げるため、法整備等を行い、誰もが安心して参加できる制度基盤と市場ルールを整備する。

(3) 電子政府の実現
 2003年度には電子情報を紙情報と同等に扱う行政を実現するために、行政内部を電子化するとともに、(1)すべての行政手続きをインターネット経由で可能とする、(2)ワンストップサービス(「高度情報化社会」参照)の実現、(3)電子印鑑の機能を持ち、セキュリティの高い行政ICカードを早急に導入する、など官民接点のオンライン化を進める。

(4) 人材育成の強化
 (1)インターネット個人普及率を2005年に60%超とする、(2)IT教育体制の強化、(3)IT関連の修士、博士号取得者を増加させ、併せて2005年までに3万人程度の優秀な外国人IT技術者・研究者を確保するため、ミレニアムプロジェクトの早期達成やIT指導者の育成、外国人受入関連制度の見直しなどを行う。